日本人と外国人配偶者との離婚手続き
2014.09.23.12:32
外国人配偶者と離婚する場合に必要な手続き
【事例】 10年前に結婚し、現在は日本に居住している日本人と外国人配偶者(中学1年になる未成年の子が一人あり)の場合。
1 準拠法
まず、そもそも離婚が成立するためには、どの国の法律に基づくのかが問題となります。この点、「法の適用に関する通則法」第27条によれば、離婚の準拠法は以下の通りとなっています。
① 夫婦の共通本国法
② ①がない場合は、夫婦の共通常居所の法律
③ ①も②もない場合は、夫婦の最も密接な関係国の法律
通常、日本人と外国人夫婦の場合は共通本国法というものはないため、夫婦の共通常居所が日本にあれば、日本法(日本の民法)によることとなります。
日本民法では、協議離婚、調停離婚、裁判離婚のいずれかにより離婚が認められます。ただし、協議離婚と調停離婚では離婚理由は特に問われませんが、裁判離婚では離婚理由が必要となりますので(民法770条)、この点は注意が必要です。
事例では、合意が整うのあれば、協議離婚や調停離婚での離婚が可能です。合意が難しい場合は、裁判離婚の方法を選択することとなります。
2 離婚の効力
事例では、日本法が適用されるため、例えば協議離婚による場合でも日本国内に限れば、離婚が成立し、離婚の効力も生じます。
しかし、外国人である配偶者の属する国によっては、離婚自体を認めない場合や協議離婚を認めていない場合がありますので、日本で成立した離婚が配偶者の本国でも効力があるのかについては、在日大使館・領事館に確認をしておく必要があります。
この点、日本における協議離婚では足りないが、日本での裁判離婚であれば本国でも効力を認める国もあります。その場合は、日本で裁判離婚を選択します。
これに関連して、裁判離婚ではなく、あくまで調停離婚を利用した場合、裁判離婚との共通性を明らかにするために、調停条項に「確定判決と同一の効力を有する」との文言を記載することで裁判離婚と同様の取扱いを認める国もあります。ただし、このような方法も、本国で承認されるかどうかは確実とはいえませんので、やはり予め在日大使館・領事館に確認しておくべきでしょう。
さらに、未成年の子がいる場合は、離婚を認めない、あるいは離婚の要件が厳しくなるなどの場合もありますので、この点も必ず確認をしておきましょう。
3 日本人とブラジル人配偶者の離婚の場合
たとえば、配偶者がブラジル人の場合で考えてみましょう。
ブラジルでの取扱いはどのようになっているのか、ブラジル領事館に問合わせたことがあります。その回答をいただきましたので、ポイントを紹介します。
「ブラジル人と日本人との婚姻の日本での離婚判決は、ブラジルの高等裁判所で承認される必要があります。
そして、ブラジルの裁判所で承認を受けるためには、同手続きを行うことが出来るブラジル人弁護士を通して下記の書類を提出する必要があります。
① 依頼する弁護士に宛てた委任状
② 日本裁判所の判決文の原本(領事館認証済みのもの)
③ 可能であれば、元配偶者の離婚同意書、署名認証が行われたもの
④ ブラジルの婚姻届
上記の日本の書類はすべて、ブラジル領事館における認証手続きが行われている必要があり、ブラジルの公証翻訳人による翻訳を行う必要があります。
そして、日本での離婚判決をブラジルの裁判所で承認を受けた後、婚姻届が行われたブラジルの登記所において婚姻証明書に追記を行う必要があります。
②の項目については市町村役場の離婚届と戸籍謄本があれば手続きが可能と思われますが、ブラジル人弁護士とのご相談が必要です。
ブラジルでの離婚の手続きの詳細につきましてはブラジル人弁護士とご相談下さい。」
以上のような回答でした。これによると、日本において裁判離婚によることが原則となりますが、離婚届と戸籍謄本があれば手続き可能ということですので、協議離婚をして市町村役場に離婚届を提出し、離婚後の戸籍謄本を取得し、ブラジル公証翻訳人による翻訳を行うことにより、必ずしも裁判離婚という方法によらなくともよいということになります。
ただし、この点も明言されているわけではないので、ブラジル人弁護士に相談しながら手続きを進める必要があります。
4 財産分与、親権等
外国によっては、財産分与を認めていないところもありますので、注意してください。また、日本では親権者をどちらか一方に決めますが、外国では離婚後も共同親権が認められているところも多くありますので、この点もやはり事前に確認しておくようにしましょう。
5 離婚後の在留資格
日本人と婚姻していた外国人配偶者が離婚をし、その後も日本にとどまる場合は、在留資格の変更が必要となることがあります。
在留資格が「日本人の配偶者等」となっている場合は、「定住者」への変更が必要です。この場合は、在留資格変更許可申請書を提出する必要があります。
一定期間婚姻生活が継続していた場合は、在留資格の変更が認められることが多いと思いますが、その必要性について、陳述書などを作成して補足するなどの工夫も必要です。この点も予め日本の入国管理局で確認するようにしましょう。
以上
◆離婚で悩んだら、当事務所へご相談ください。
くらしと経営の法務コンサルタント 橋本行政書士事務所
TEL 059-355-1981
【事例】 10年前に結婚し、現在は日本に居住している日本人と外国人配偶者(中学1年になる未成年の子が一人あり)の場合。
1 準拠法
まず、そもそも離婚が成立するためには、どの国の法律に基づくのかが問題となります。この点、「法の適用に関する通則法」第27条によれば、離婚の準拠法は以下の通りとなっています。
① 夫婦の共通本国法
② ①がない場合は、夫婦の共通常居所の法律
③ ①も②もない場合は、夫婦の最も密接な関係国の法律
通常、日本人と外国人夫婦の場合は共通本国法というものはないため、夫婦の共通常居所が日本にあれば、日本法(日本の民法)によることとなります。
日本民法では、協議離婚、調停離婚、裁判離婚のいずれかにより離婚が認められます。ただし、協議離婚と調停離婚では離婚理由は特に問われませんが、裁判離婚では離婚理由が必要となりますので(民法770条)、この点は注意が必要です。
事例では、合意が整うのあれば、協議離婚や調停離婚での離婚が可能です。合意が難しい場合は、裁判離婚の方法を選択することとなります。
2 離婚の効力
事例では、日本法が適用されるため、例えば協議離婚による場合でも日本国内に限れば、離婚が成立し、離婚の効力も生じます。
しかし、外国人である配偶者の属する国によっては、離婚自体を認めない場合や協議離婚を認めていない場合がありますので、日本で成立した離婚が配偶者の本国でも効力があるのかについては、在日大使館・領事館に確認をしておく必要があります。
この点、日本における協議離婚では足りないが、日本での裁判離婚であれば本国でも効力を認める国もあります。その場合は、日本で裁判離婚を選択します。
これに関連して、裁判離婚ではなく、あくまで調停離婚を利用した場合、裁判離婚との共通性を明らかにするために、調停条項に「確定判決と同一の効力を有する」との文言を記載することで裁判離婚と同様の取扱いを認める国もあります。ただし、このような方法も、本国で承認されるかどうかは確実とはいえませんので、やはり予め在日大使館・領事館に確認しておくべきでしょう。
さらに、未成年の子がいる場合は、離婚を認めない、あるいは離婚の要件が厳しくなるなどの場合もありますので、この点も必ず確認をしておきましょう。
3 日本人とブラジル人配偶者の離婚の場合
たとえば、配偶者がブラジル人の場合で考えてみましょう。
ブラジルでの取扱いはどのようになっているのか、ブラジル領事館に問合わせたことがあります。その回答をいただきましたので、ポイントを紹介します。
「ブラジル人と日本人との婚姻の日本での離婚判決は、ブラジルの高等裁判所で承認される必要があります。
そして、ブラジルの裁判所で承認を受けるためには、同手続きを行うことが出来るブラジル人弁護士を通して下記の書類を提出する必要があります。
① 依頼する弁護士に宛てた委任状
② 日本裁判所の判決文の原本(領事館認証済みのもの)
③ 可能であれば、元配偶者の離婚同意書、署名認証が行われたもの
④ ブラジルの婚姻届
上記の日本の書類はすべて、ブラジル領事館における認証手続きが行われている必要があり、ブラジルの公証翻訳人による翻訳を行う必要があります。
そして、日本での離婚判決をブラジルの裁判所で承認を受けた後、婚姻届が行われたブラジルの登記所において婚姻証明書に追記を行う必要があります。
②の項目については市町村役場の離婚届と戸籍謄本があれば手続きが可能と思われますが、ブラジル人弁護士とのご相談が必要です。
ブラジルでの離婚の手続きの詳細につきましてはブラジル人弁護士とご相談下さい。」
以上のような回答でした。これによると、日本において裁判離婚によることが原則となりますが、離婚届と戸籍謄本があれば手続き可能ということですので、協議離婚をして市町村役場に離婚届を提出し、離婚後の戸籍謄本を取得し、ブラジル公証翻訳人による翻訳を行うことにより、必ずしも裁判離婚という方法によらなくともよいということになります。
ただし、この点も明言されているわけではないので、ブラジル人弁護士に相談しながら手続きを進める必要があります。
4 財産分与、親権等
外国によっては、財産分与を認めていないところもありますので、注意してください。また、日本では親権者をどちらか一方に決めますが、外国では離婚後も共同親権が認められているところも多くありますので、この点もやはり事前に確認しておくようにしましょう。
5 離婚後の在留資格
日本人と婚姻していた外国人配偶者が離婚をし、その後も日本にとどまる場合は、在留資格の変更が必要となることがあります。
在留資格が「日本人の配偶者等」となっている場合は、「定住者」への変更が必要です。この場合は、在留資格変更許可申請書を提出する必要があります。
一定期間婚姻生活が継続していた場合は、在留資格の変更が認められることが多いと思いますが、その必要性について、陳述書などを作成して補足するなどの工夫も必要です。この点も予め日本の入国管理局で確認するようにしましょう。
以上
◆離婚で悩んだら、当事務所へご相談ください。
くらしと経営の法務コンサルタント 橋本行政書士事務所
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