管理組合掲示板に掲示した管理組合名の文書を勝手に剥がす行為は問題ないか。
2016.10.19.18:10
【質 問】 正式な管理組合名による掲示物(文書)を勝手に剥がした行為はどのような問題を生ずるか。
あるマンションの管理組合の理事長をしています。私のマンションでは、理事会の方針に何かと反対する数名の組合員がいますが、あるとき、理事長名で掲示した文書が何者かによって剥がされ、その反対者の連名による文書が理事会の許可なく掲示されるということがありました。正式な理事長名(理事長印有り)での掲示物を勝手に剥がすことは犯罪行為に該当すると思いますが、どのような犯罪が成立するのでしょうか。これが、剥がされたのではなく、理事長名の文書の上に勝手に貼られた場合はどうなるのでしょうか。また、理事会の許可なく掲示された掲示物は直ちに廃棄しても大丈夫でしょうか。
【回 答】
正式な理事長名での掲示物を勝手に剥がす行為は、以下の刑法上の犯罪行為に該当することになるでしょう。
1 器物損壊罪または窃盗罪に該当
まず、理事長名の文書の破棄として器物損壊罪(刑法第261条。3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは併科)に該当する可能性があります。もし仮に、その行為が自分のものにしようとの意図があれば、それは領得の意思に基づくものとして窃盗罪(刑法第235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当することになります。
2 威力業務妨害罪に該当
さらに、理事会の管理組合活動である組合員への周知活動を、威力によって妨害するものとして威力業務妨害罪(刑法第234条。3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にも該当します。
3 罪数関係
これらは一個の行為が複数の罪名に触れるものとして、器物損壊罪または窃盗罪と威力業務妨害罪の観念的競合となり(刑法第54条)、刑罰は、その最も重い窃盗罪に規定される10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑となります。
4 掲示物の上に勝手に貼られた行為について
剥がされたものでなく、無断で掲示物を貼付された場合でも、それは管理組合掲示物の効用を害したものとして前述と同様器物損壊罪に該当します。
5 共同正犯、教唆犯、幇助犯
以上のとおり、いずれも刑法上の犯罪行為に該当し、もしこのような行為を複数の者が通謀して実行したとすれば、その者らは共謀共同正犯として犯罪行為の共同正犯(刑法第60条)となります。共同で実行していない場合は、直接の行為者が正犯、その背後で実行をそそのかした者は教唆犯(刑法第61条)が、単に実行を容易にしたに過ぎないのであれば幇助犯(刑法第62条)に該当します。
6 理事会の許可なく掲示された掲示物の取り扱い
掲示板は共用物であり、各組合員が個人的に勝手に文書を掲示するようなことは許されません。掲示は管理組合、すなわち通常は理事会と理事長が行います。個人が勝手に掲示した場合は、理事会はこれを撤去することが許されるでしょう。ただし、撤去した場合でも、直ぐに廃棄することは避けてください。無断掲示物でも「紙」という財物であり、直ちに廃棄してしまうと、理事会側が器物損壊罪等に問われかねないからです。このような場合は、無断掲示物でも一旦は保管し、相当期間を定めてその引き取りを求めてください。それでも引き取り手がないということが判明した時点で廃棄するのがよいでしょう。
なお、以上のような事態に備えて、管理組合では予め「掲示板使用細則」等の規則を作成しておくようにしましょう。
以上
マンション管理で困ったときは当事務所にご相談ください。
橋本行政書士事務所
特定行政書士 マンション管理士 橋本俊雄
TEL 059-355-1981
あるマンションの管理組合の理事長をしています。私のマンションでは、理事会の方針に何かと反対する数名の組合員がいますが、あるとき、理事長名で掲示した文書が何者かによって剥がされ、その反対者の連名による文書が理事会の許可なく掲示されるということがありました。正式な理事長名(理事長印有り)での掲示物を勝手に剥がすことは犯罪行為に該当すると思いますが、どのような犯罪が成立するのでしょうか。これが、剥がされたのではなく、理事長名の文書の上に勝手に貼られた場合はどうなるのでしょうか。また、理事会の許可なく掲示された掲示物は直ちに廃棄しても大丈夫でしょうか。
【回 答】
正式な理事長名での掲示物を勝手に剥がす行為は、以下の刑法上の犯罪行為に該当することになるでしょう。
1 器物損壊罪または窃盗罪に該当
まず、理事長名の文書の破棄として器物損壊罪(刑法第261条。3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは併科)に該当する可能性があります。もし仮に、その行為が自分のものにしようとの意図があれば、それは領得の意思に基づくものとして窃盗罪(刑法第235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当することになります。
2 威力業務妨害罪に該当
さらに、理事会の管理組合活動である組合員への周知活動を、威力によって妨害するものとして威力業務妨害罪(刑法第234条。3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にも該当します。
3 罪数関係
これらは一個の行為が複数の罪名に触れるものとして、器物損壊罪または窃盗罪と威力業務妨害罪の観念的競合となり(刑法第54条)、刑罰は、その最も重い窃盗罪に規定される10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑となります。
4 掲示物の上に勝手に貼られた行為について
剥がされたものでなく、無断で掲示物を貼付された場合でも、それは管理組合掲示物の効用を害したものとして前述と同様器物損壊罪に該当します。
5 共同正犯、教唆犯、幇助犯
以上のとおり、いずれも刑法上の犯罪行為に該当し、もしこのような行為を複数の者が通謀して実行したとすれば、その者らは共謀共同正犯として犯罪行為の共同正犯(刑法第60条)となります。共同で実行していない場合は、直接の行為者が正犯、その背後で実行をそそのかした者は教唆犯(刑法第61条)が、単に実行を容易にしたに過ぎないのであれば幇助犯(刑法第62条)に該当します。
6 理事会の許可なく掲示された掲示物の取り扱い
掲示板は共用物であり、各組合員が個人的に勝手に文書を掲示するようなことは許されません。掲示は管理組合、すなわち通常は理事会と理事長が行います。個人が勝手に掲示した場合は、理事会はこれを撤去することが許されるでしょう。ただし、撤去した場合でも、直ぐに廃棄することは避けてください。無断掲示物でも「紙」という財物であり、直ちに廃棄してしまうと、理事会側が器物損壊罪等に問われかねないからです。このような場合は、無断掲示物でも一旦は保管し、相当期間を定めてその引き取りを求めてください。それでも引き取り手がないということが判明した時点で廃棄するのがよいでしょう。
なお、以上のような事態に備えて、管理組合では予め「掲示板使用細則」等の規則を作成しておくようにしましょう。
以上
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