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預貯金をめぐる最高裁判断(判例変更)

2016.12.19.18:07

相続が生じた場合の預貯金をめぐる争いに関し、2016年12月19日最高裁判所の判断が下された。「預貯金は当然に分割されず、遺産分割の対象となる」として、これまでの判例を変更したのである。

以下は、毎日新聞サイトからの抜粋である。
>亡くなった人の預貯金を親族がどう分けるか争った相続の審判を巡り、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は19日の決定で、「預貯金は法定相続の割合で機械的に分配されず、話し合いなどで取り分を決められる『遺産分割』の対象となる」との判断を示した。預貯金を遺産分割の対象外としてきた判例を変えるもので、一部の相続人に生前贈与があっても機械的配分になり不平等を生んでいた問題が解消される。<
毎日新聞2016年12月19日より抜粋
詳しくは、こちらのサイトへ(毎日新聞)http://mainichi.jp/articles/20161219/k00/00e/040/214000c

これまでの流れを概観してみよう。
1 可分債権について 
 相続財産の可分債権は法律上当然に分割され、共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされていた(最判昭29.4.8)。今回の決定はこの可分債権の当然分割についての判例を変更したものである。

2 金銭について
 預貯金としてではなく、現金として保管している金銭については、他の相続人は自己の相続分に相当する支払いを求めることはできないとして、預貯金債権とは異なる扱いをしている(最判平4.4.10)。

3 定額郵便貯金について
 貯金であるが、通常貯金ではない定額貯金の場合は、1の可分債権とは異なり、当然分割の対象とはされず、遺産分割手続きによるべきとされた(最判平22.10.8)。

4 株式・投資信託・国債について
 いずれも当然分割の対象ではないとされている(最判平26.2.25)。
(以上、「模範小六法 平成29年版」判例六法編集委員会編・三省堂参照)

 つまり、今回の最高裁の判断により、可分債権も含めておよそ相続財産のすべてが当然分割の対象とはならず、遺産分割の対象となることになったのである。これにより、相続人のうち生前贈与を受けていない相続人の不利益が救済される可能性が広がった。ただし、遺産分割の重要性がますます高まったため、うまく協議が整えばよいが、協議が整わない場合は、調停や審判、さらには訴訟という裁判所での手続きが必要となる事案が増すことになるのは否めない。
                                                                        以上

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「くらしと経営の法務コンサルタント」
 橋本行政書士事務所
特定行政書士 マンション管理士 橋本俊雄
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天皇の生前退位は認めるべきか

2016.12.11.11:41

天皇の生前退位について(2016年12月11日記)

 2016年8月の天皇の「お気持ち表明」を受けて、現在、天皇の生前退位について議論がされている。そこで、当ブログでも、主に清宮四郎著「憲法Ⅰ[第三版]」の記述を参考に論点を整理してみようと思う。

1 まず「皇位の継承」とは何か
  それは、一定の原因にもとづき、一定の人が、皇位に即くことをいうとされている。現在では、「一定の原因」とは天皇の崩御のことであり、「一定の人」とは皇統に属する皇嗣をいう。

2 次に、皇位継承の原因は何か
  この点について憲法は、「皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」(第2条)と規定するのみで、その原因を明らかにしていない。この皇位継承の原因を規定するのが皇室典範である。皇室典範第4条によれば、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」と規定している。いわゆる天皇崩御である。「崩御」とは、天皇等の死去を敬って言う言葉であるから、皇位継承の原因は天皇の死亡である。

3 天皇の生前退位は認められるべきか
  そこで、天皇が生前に退位することは認められるのかが問題となる。この点、清宮四郎著「憲法Ⅰ[第三版]」では以下のように記述されている。「天皇が生前退位することは、わが歴史上はその例があり、イギリスなどでは国王の退位が認められ、立法論としては議論のありうるところで、現に皇室典範制定の際に貴族院で論議されたが、現行法にはなんらの規定もない。立法論としては賛否両論があり、その理由については、いろいろ考えられるが、退位を必要とするような事態が生ずることは予想せられるところであり、そのような場合にはむしろ退位を認めることにしたほうが妥当のように思われる。」(清宮同書163頁)。
 では、この天皇の生前退位についての賛否両論におけるそれぞれの理由はどのようなものであろうか。同じく清宮氏の上げた各々の理由を見てみよう。

[生前退位賛成論の理由]
 ① わが国の歴史をみると譲位が行われた実例がかなりあり、外国でも、イギリスなどで国王の退位が認められている。
 ② 天皇に不治の重患のある場合に退位を認めないのは不合理であり、皇嗣について、同じ理由による継承の順序の変更が認められている(皇室典範第3条)のと比べて均衡を欠く。
 ③ 人間天皇の自由意志は尊重されるべきである。
 ④ 天皇の道徳的意見による退位の途をふさぐことは、国民感情との関係からも好ましくない。
 このうち、①②は同書の本文でも述べられているところである。今年の8月の天皇のお気持ち表明を受けた現在においては、特に③の「人間天皇の自由意志の尊重」という点がより重要性を増すことになると思われる。

[生前退位反対論の理由]
 ① わが歴史上の譲位には、天皇の意志に反して強要によって行われたことがあり、また、譲位後の上皇、法皇が威勢を振ったりしたこともあって、弊害を伴う場合がかなり多かった。
 ② 不治の重患の場合は、摂政によって解決されるべきである。皇嗣の場合との不均衡は、即位の重大性に照らして当然である。
 ③ 退位の自由を認めれば、即位を拒む自由も認めなければならず、両者を認めれば、皇位世襲の原則が実現されなくなるおそれがある。天皇の自由意志も、国家の基本制度としての皇位世襲の原則に優先すべきものではない。
 ④ 道徳的な問題としては、最後まで皇位にあってその責任をはたすべきであるということもかんがえられなければならない。
 ⑤ 象徴としてそれにふさわしい行為のみを担当する天皇の場合は、退位の必要の生ずることは、実際にはほとんどなかろう。
 ⑥ 自由意志による退位、そのような偽装のもとに行われるおそれがあり、また、自由意志による退位を保障する規定を設けることは技術的に困難である。
 ⑦ 法律制定の場合にせよ、具体的の場合にせよ、現在の天皇を前にして、退位をとやかくいうのは好ましいことではない。
 ⑧ もし将来ほんとうに退位を必要とする事態が生じた場合は、そのときに、典範を改正し、または特則を制定して、臨機の措置をとればいい。
※以上、清宮同書163頁以下註書き(二)による。

4 私見
  反対論のいう懸念も理解できるが、なによりも重要なのは、天皇にも人間としての尊厳があり、いかに天皇制という制度の下であっても、その天皇の自由意志をまったく無視することはやはり妥当とは思われない。また、超高齢社会における現在の日本において、天皇であっても高度な認知症などにかかることは十分予想せられ、そのような場合でも退位を認めないことで、ほんとうに「日本国の象徴、日本国民統合の象徴」としての役割を担えるかは甚だ疑問といわざるを得ない。8月の天皇のお気持ち表明もその点を危惧していたのである。
 よって、私は生前退位を認めるべきと考える。そして、その方法は皇室典範改正によるべきと考える。それは憲法の趣旨であり、憲法の正当な解釈であるからである。
  なお、その際最も注意しなればならないことは、憲法の趣旨を踏まえること、天皇の政治利用になってはいけないこと。この2点である。
                                                                      以上

保証人の求償権の範囲~民法解説

2016.12.04.16:57

保証人の求償権
2016年12月4日記

【質 問】
 主たる債務者に代わって債権者に弁済した保証人は、主たる債務者に対してどの範囲で求償権を有するのか?

【回 答】
 委託を受けた保証人か否かにより求償の範囲が異なる。

[説 明]
1 求償権の性質、根拠規定
 保証人が主たる債務者に代わって債権者に弁済したときは、保証人は主たる債務者に対して求償権を有する。本来、保証債務の履行は、債権者との関係では保証契約に基づく自己の債務の履行であるが、主たる債務者との関係でみれば、それは他人である主たる債務者の債務を弁済したことになる。
この場合の求償権の本来の性質は、委託を受けて保証人になっていた場合は、委任事務処理費用の償還請求(民法649条、650条)であるし、委託なしに保証人になっていた場合は、事務管理費用の償還請求(民法701条)となるはずである。しかし、民法はあえてこれらの特別規定となる規定(民法459条)を置いたので、こちらを優先して適用することになる(「特別法は一般法に優先する」の原則)。

2 求償権の範囲
 保証人の求償権の範囲は、主たる債務者から委託を受けていたか否かで異なることになる。

(1)委託を受けていた(受託)保証人の場合
   連帯債務の場合と同様である(民法459条、442条)。
   つまり、弁済のための出捐額、弁済以降の法定利息、不可避的な費用、損害賠償額を含むすべての求償ができる。

(2)委託を受けずに保証人となっていた場合
   この場合は、さらに保証が主たる債務者の意思に反していたか否かにより分かれる。

  ア)保証が主たる債務者の意思に反しない場合
    出捐行為の当時、主たる債務者が利益を受けた限度において求償ができる(民法462条1項)。つまり、弁済以降の法定利息、不可避的な費用、損害賠償額については求償できない。

  イ)保証が主たる債務者の意思に反する場合
    求償の当時、主たる債務者が現に利益を受ける限度において求償できる(民法462条2項)。つまり、保証人が弁済した後、求償までの間に主たる債務者が債権者に対する債権を取得し、保証人に対してその相殺の原因を主張するときは、保証人は求償できなくなる。したがって、弁済のための出捐額についても、このような場合には主たる債務者に求償できなくなることがあるのである。この場合、保証人は、債権者に対してその相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。つまり、その債権が保証人に移転するのである。
                                                                    以上

プロフィール

橋本俊雄

Author:橋本俊雄
ようこそ「行政書士法務相談室」へ!
三重県四日市市の特定行政書士・マンション管理士です。遺言・相続、契約、離婚手続などの民事法務と中小企業経営支援、マンション管理組合支援を柱に業務を行っています。
法律関係の話題と日々の思いを綴ってゆきます。
どうぞよろしくお願いします。

橋本行政書士事務所所長
特定行政書士、マンション管理士
TEL 059-355-1981

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