適正な修繕積立金額とは
2012.06.30.10:41
適正な修繕積立金額とは
~平成23年4月国土交通省発表「マンションの修繕積立金に関するガイドラインについて」
1 はじめに
平成23年4月18日国土交通省(以下「国交省」という。)は、「マンションの修繕積立金に関するガイドラインについて」という指針(以下、「ガイドライン」という。)を発表しました。多くのマンションが修繕積立金に不足を生じており、適正な修繕積立金としてどのくらいが必要かを知りたいと思っていることでしょう。今回は、このガイドラインの内容のポイントについてお話しします。以下、出展は国交省発表の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要に基づいていますので、詳しく知りたい方は、国交省のホームページをご覧ください。
2 ガイドラインの背景と目的
マンションの良好な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、計画的な修繕工事の実施が不可欠であり、そのためには、長期修繕計画に基づき、適正な修繕積立金の額の設定を行うことが重要です」。ところが、「一般に、マンションの分譲段階では、分譲事業者が、長期修繕計画と修繕積立金の額を購入予定者に提示していますが、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例もみられ、必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった事例も生じています」。そこで、このような背景から、国土交通省は、「特に新築マンションの購入予定者に対し、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額の目安を示し、分譲事業者から提示された修繕積立金の額の水準等についての判断材料を提供するために、『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』を作成し」た、としました。
3 ガイドラインのポイント
(1) 修繕積立金の額の目安
ア)専有床面積当たりの修繕積立金の額
主として区分所有者自ら居住する住居専用の単棟型マンションを対象とし、15階未満と20階以上(超高層マンション)を分けた上で、平均値と事例の3分の2が包含される幅を示しています。ここでは15階未満の平均値を紹介します。敷地面積が5,000㎡未満では、218円/㎡・月、5,000~10,000㎡では202円/㎡・月、10,000㎡以上では178円/㎡・月となっています。ただし、事例のばらつきが大きいため、事例の3分の2が包含される幅がそれぞれありますので、一律ではありません。
イ)機械式駐車場がある場合の加算額
この場合の加算額の計算式は、「加算額=機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費※×台数×購入予定の住戸の負担割合」となります。※機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費は、機会式駐車場の種類に応じて機会式駐車場の修繕工事費(1台あたりの月額)の目安が変わります。2段(ピット1段)昇降式では7,085円/台・月、3段(ピット2段)昇降式では6,040円/台・月、3段(ピット1段)昇降横行式では8,540円/台・月、4段(ピット2段)昇降横行式では14,165円/台・月となります。
(2) 具体的計算事例
ア)修繕積立金の額
例えば、10階建て、建築面積延床面積8,000㎡のマンションの専有面積80㎡を購入する場合でいえば、目安の平均値は80㎡×202円/㎡・月=16,160円となります。ただし、80㎡×140円/㎡・月=11,200円/月~80㎡×265円/㎡・月=21,200円/月の間で目安の幅があります。
イ)機会式駐車場がある場合の加算額
例えば、購入予定のマンションに、2段(ピット1段)昇降式の機械式駐車場が50台分あり、購入予定住戸の専有床面積80㎡、マンション全体の専有面積合計6,000㎡(住戸の負担割合80/6,000)の場合の加算額は、7,085円(月額修繕工事の目安)×50台×80/6,000=4,723円となります。(1)の場合に加えると、優に20,000円を超えることになります。
4 修繕積立金の額の目安を活用するにあたっての留意点
(1) 以上の額はあくまで「目安」であり、提示額がこの幅に収まっていないからといって、直ちに不適切と判断されるわけではありません。
(2) 分譲業者から提示された額が「目安」の幅に収まっていない場合には、長期修繕計画に内容や修繕積立金の設定の考え方、積立方法等のチェックが必要です。
(3) 分譲業者は、購入予定者に対し、長期修繕計画の内容、修繕積立金の設定の考え方、積立方法等について、このガイドラインを参考に説明することが重要となります。
5 ガイドラインの活用について
(1) この国交省発表のガイドラインは、主として新築マンションの購入予定者向けに、修繕積立金に関する基本的知識や修繕積立金の額の目安を示したものですが、併せて分譲事業者が購入予定者に説明するに際して活用することが重要です。国交省は、そのことを通じて、適正な修繕積立金の設定・積立の促進につながることを期待するとしています。
(2) 現に長期修繕計画や修繕積立金の見直しを検討している管理組合についても、適切な修繕積立金の実現のために、是非このガイドラインを参考にしてください。
6 「マンションすまい・る債」での適用要件
住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」では、一戸当りの修繕積立金の平均月額が一定以上積み立てることになっていることが要件の一つとされていますので、参考のためにその額を紹介します。
①平均専有面積55㎡以上の経過(築)年数5年未満のマンションでは6,000円、②5年以上10年未満では7,000円、③10年以上17年未満では9,000円、④17年以上では10,000円とされています(平均専有面積が55㎡未満の場合は各額の約5%減)。なお、「長期優良住宅」の認定を受けている場合は、一戸当りの修繕積立金の平均月額にかかわりなく、この要件満たしているものとされます。
※ 国交省ホームページ(マンションの修繕積立金に関するガイドライン)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/tsumitate2304.pdf
住宅金融支援機構ホームページ
http://www.jhf.go.jp/index.html
以上
~平成23年4月国土交通省発表「マンションの修繕積立金に関するガイドラインについて」
1 はじめに
平成23年4月18日国土交通省(以下「国交省」という。)は、「マンションの修繕積立金に関するガイドラインについて」という指針(以下、「ガイドライン」という。)を発表しました。多くのマンションが修繕積立金に不足を生じており、適正な修繕積立金としてどのくらいが必要かを知りたいと思っていることでしょう。今回は、このガイドラインの内容のポイントについてお話しします。以下、出展は国交省発表の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要に基づいていますので、詳しく知りたい方は、国交省のホームページをご覧ください。
2 ガイドラインの背景と目的
マンションの良好な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、計画的な修繕工事の実施が不可欠であり、そのためには、長期修繕計画に基づき、適正な修繕積立金の額の設定を行うことが重要です」。ところが、「一般に、マンションの分譲段階では、分譲事業者が、長期修繕計画と修繕積立金の額を購入予定者に提示していますが、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例もみられ、必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった事例も生じています」。そこで、このような背景から、国土交通省は、「特に新築マンションの購入予定者に対し、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額の目安を示し、分譲事業者から提示された修繕積立金の額の水準等についての判断材料を提供するために、『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』を作成し」た、としました。
3 ガイドラインのポイント
(1) 修繕積立金の額の目安
ア)専有床面積当たりの修繕積立金の額
主として区分所有者自ら居住する住居専用の単棟型マンションを対象とし、15階未満と20階以上(超高層マンション)を分けた上で、平均値と事例の3分の2が包含される幅を示しています。ここでは15階未満の平均値を紹介します。敷地面積が5,000㎡未満では、218円/㎡・月、5,000~10,000㎡では202円/㎡・月、10,000㎡以上では178円/㎡・月となっています。ただし、事例のばらつきが大きいため、事例の3分の2が包含される幅がそれぞれありますので、一律ではありません。
イ)機械式駐車場がある場合の加算額
この場合の加算額の計算式は、「加算額=機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費※×台数×購入予定の住戸の負担割合」となります。※機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費は、機会式駐車場の種類に応じて機会式駐車場の修繕工事費(1台あたりの月額)の目安が変わります。2段(ピット1段)昇降式では7,085円/台・月、3段(ピット2段)昇降式では6,040円/台・月、3段(ピット1段)昇降横行式では8,540円/台・月、4段(ピット2段)昇降横行式では14,165円/台・月となります。
(2) 具体的計算事例
ア)修繕積立金の額
例えば、10階建て、建築面積延床面積8,000㎡のマンションの専有面積80㎡を購入する場合でいえば、目安の平均値は80㎡×202円/㎡・月=16,160円となります。ただし、80㎡×140円/㎡・月=11,200円/月~80㎡×265円/㎡・月=21,200円/月の間で目安の幅があります。
イ)機会式駐車場がある場合の加算額
例えば、購入予定のマンションに、2段(ピット1段)昇降式の機械式駐車場が50台分あり、購入予定住戸の専有床面積80㎡、マンション全体の専有面積合計6,000㎡(住戸の負担割合80/6,000)の場合の加算額は、7,085円(月額修繕工事の目安)×50台×80/6,000=4,723円となります。(1)の場合に加えると、優に20,000円を超えることになります。
4 修繕積立金の額の目安を活用するにあたっての留意点
(1) 以上の額はあくまで「目安」であり、提示額がこの幅に収まっていないからといって、直ちに不適切と判断されるわけではありません。
(2) 分譲業者から提示された額が「目安」の幅に収まっていない場合には、長期修繕計画に内容や修繕積立金の設定の考え方、積立方法等のチェックが必要です。
(3) 分譲業者は、購入予定者に対し、長期修繕計画の内容、修繕積立金の設定の考え方、積立方法等について、このガイドラインを参考に説明することが重要となります。
5 ガイドラインの活用について
(1) この国交省発表のガイドラインは、主として新築マンションの購入予定者向けに、修繕積立金に関する基本的知識や修繕積立金の額の目安を示したものですが、併せて分譲事業者が購入予定者に説明するに際して活用することが重要です。国交省は、そのことを通じて、適正な修繕積立金の設定・積立の促進につながることを期待するとしています。
(2) 現に長期修繕計画や修繕積立金の見直しを検討している管理組合についても、適切な修繕積立金の実現のために、是非このガイドラインを参考にしてください。
6 「マンションすまい・る債」での適用要件
住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」では、一戸当りの修繕積立金の平均月額が一定以上積み立てることになっていることが要件の一つとされていますので、参考のためにその額を紹介します。
①平均専有面積55㎡以上の経過(築)年数5年未満のマンションでは6,000円、②5年以上10年未満では7,000円、③10年以上17年未満では9,000円、④17年以上では10,000円とされています(平均専有面積が55㎡未満の場合は各額の約5%減)。なお、「長期優良住宅」の認定を受けている場合は、一戸当りの修繕積立金の平均月額にかかわりなく、この要件満たしているものとされます。
※ 国交省ホームページ(マンションの修繕積立金に関するガイドライン)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/tsumitate2304.pdf
住宅金融支援機構ホームページ
http://www.jhf.go.jp/index.html
以上
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