
以前にも紹介しましたが、2012年2月11日三重県川越町あいあいホールにて市民公開講座を行います。
13:30~ 講師は講談師の神田織音さんです。NPO法人三重成年後見サポートセンター主催です。
私も所属していますNPOで上記のとおり公開講座を行います。その関係で、今回は成年後見について書いてみます。
人の高齢化に伴い認知症などが現れ、判断能力に問題が生じます。その場合の保護手段として、成年後見制度というものがあるのをご存知でしょうか?
成年後見制度は、介護保険制度と同時にスタートしました。これまでの福祉の考えが「措置」的であったのに対し、「契約」を中心に考えることになったのですが、判断能力がない人はこの契約の意味を理解できずサービスを受けられなるおそれがあり、このような不都合を回避するという趣旨です。すなわち介護保険と成年後見制度はいわば車の両輪という位置付けでした。ところが、介護保険の方はかなり浸透しましたが、成年後見制度の方はまだまだ理解されていません。では、「成年後見制度」って何でしょう。
1 成年後見制度とは
認知症、知的障がい、精神障がいなどの理由により、難しいことや重要なことを判断する場合、他人の力を借りなければならない人がいます。これらの人を「判断能力が不十分な方」と呼び、生活上色々と問題が生じます。例えば、「判断能力の不十分な方」が不動産や預貯金の管理をしたり介護施設への入所契約を結んだり、遺産分割の協議を行う場合にその判断が難しくとても自分自身では正しい判断が出来ないのが実情です。また、自分に不利益な契約の判断もできず、悪徳商法の被害に遭う場合もあります。このような「判断能力の不十分な方」を保護し、支援するのが成年後見制度です。
2 成年後見制度の種類
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。現在すでに判断能力が不十分な方は法定後見制度を利用することになります。これに対し、現在は判断能力は十分あるが、今のうちに将来のことを決めたい方は任意後見制度を利用することになります。
3 法定後見制度
(1) 法定後見の類型
法定後見制度には、本人の判断能力に応じて、①後見、②保佐、③補助の3つの類型があります。これらは「判断能力」の程度や本人の事情に応じた区分です。保護を受ける方をそれぞれ、①被後見人、②被保佐人、③被補助人といい、保護をする人をそれぞれ、①後見人、②保佐人、③補助人といいます。以下では、法定後見制度のうち成年後見を中心にみてみます。保佐・補助では内容が異なりますので、注意してください。
(2) 保護者(後見人)の権限
法定後見制度では、家庭裁判所から選ばれた後見人が本人である被後見人の利益を考えながら、本人を代理して契約などを行う「代理権」、本人が契約などを行う場合に後見人の同意を必要とする「同意権」、後見人の同意を得ないで行った契約などを取り消す「取消権」という方法で本人を保護します。
(3) 成年後見人は何をするのか
成年後見人が行う職務としては、①本人の身上監護を目的とする法律行為と②本人の財産管理を目的とする法律行為の二つがあります。
①については、成年後見人等は、本人の生活・医療・介護・福祉など,本人の身のまわりの事柄にも目を配りながら本人を保護・支援します。たとえば、健康診断等の受診、病院との契約や費用の支払い、本人の住居に関する契約や費用の支払い、福祉施設入所の契約や費用の支払い、介護保険法等の利用申請及び選択など行います。
②については、たとえば、預貯金の管理、年金、不動産収入等の資産管理、遺産分割等を行います。
(4) 成年後見人になる人
成年後見になる人は、申し立てにより、本人の親族(親、子供、兄弟、姪など)、法律、福祉の専門家その他の第三者、福祉関係の公益法人などの中から裁判所により選任されます。
(5) 手続の流れ
① 申立から後見開始までの期間は、おおよそ3~6ヶ月かかりますので、余裕をもって手続をする必要があります。
② 事前準備として、本人の判断能力、日常生活、経済的状況の把握、成年後見人等の選任の目的と内容の検討、申立者の検討、診断書の手配、成年後見人等の候補者検討などを行います。
③ 事前準備が整いましたら、後見開始等の審判の申立を行います。その際、申立書の作成、登記印紙、切手の準備等を行います。
④ その後、家庭裁判所調査及び審問、医師の鑑定を経て、審判により成年後見人の選任がなされ、本人及び成年後見人等に告知されます。
⑤ 家庭裁判所から法務局に登記手続きが嘱託され、登記が行われ、以後、成年後見人等の後見業務の開始します。
⑥ 後見人の職務は、本人の死亡で終了します。途中の辞任等は容易には認めれません。
4 任意後見制度
(1) 任意後見制度とは
本人の判断能力がある間に自分の望む事項を契約し、公正証書に残す制度です。
本人の判断能力が不十分となったときに、契約した任意後見の受任者が家庭裁判所に申し出をして、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されたときに後見が発効します。
(2) 任意後見人の権限
任意後見人には代理権は有りますが、同意権、取消権はありません。
(3) 任意後見の種類
任意後見には、①即効型…直ぐに後見を発効させる形態、②将来型…将来、「判断能力が不十分」になった時、発効する形態、③移行型…任意後見契約に加え、民法上の事務委任契約をし、先ず事務委任契約で契約範囲の委任を行い、「判断能力が不十分」になった場合に連続して後見がが続くようにする形態、の3種類があります。
(4) 手続の流れ
・本人の意思確認
①任意後見人の候補者を選定します。
②任意後見の目的、類型を決めます。
③このときは、契約能力が必要です。
・委託する事務の内容・・・事務の範囲は一定の様式によります。
・公証人との調整・・・代理権の範囲を決めます。
・公正証書作成
・判断能力が低下したら、任意後見受任者が家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立をします
・後見監督人が選任されて、後見が開始します。
・任意後見の終了・・・本人の死亡により終了します。
以上が成年後見制度の概略です。ご自身あるいはご家族の中で、すでに判断能力に問題があると思われる場合は法定後見の利用を、将来判断能力が低下した場合に今から備えたいという方は任意後見の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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