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特許権と質権

2017.12.12.15:12

特許権にも担保を付けて資金を調達するという場合、まず思いつくのは抵当権ですが、抵当権は目的物が不動産、地上権、永小作権、自動車(自動車抵当法)などに限られているため、特許権を対象とすることはできません。
しかし、質権であれば目的物が限定されないため、特許権など知的財産権も対象とすることができます。

ところで、普通、質権では占有が質権者に移転し、以後の質物利用権は質権者が有することになりますので(質権の留置的効力)、特許権に質権を設定した場合、特許権者はその利用ができなくなるのではないかという疑問がわきます。
しかし、特許権では、その高度な発明(特許法第2条第1項)という性質から、その利用は特許権者が行うのが有効であり、質権者ではうまく使いこなせないという特殊性があります。そのため、特許権では、質権設定後も引き続き特許権者が利用することが認められています。つまり特許権の質権には留置的効力がないのです。
この点、特許法第95条が「特許権、・・・を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。」と規定しているのはその趣旨です。
以上から、特許権にも質権(これは根質権も同じ)設定は可能であること、ただし、質権設定後も特許権者(質権設定者)が特許権を利用し続けることとなります。

もちろん、特許権者たる質権設定者は、質権設定後は質権者の承諾を得なければ特許権の放棄や訂正審判・訂正請求など質権者を害する行為はできなくなるという制約を受けます(特許法第97条、第127条、第134条の2第9項)。
なお、この質権の効力を発生させるためには、特許法に基づく質権の登録が必要であるので(特許法第98条1項3号)、注意してください。

さらに詳しく知りたい場合は、特許権の専門家である弁理士、または特許庁にお尋ねください。
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保証人の求償権の範囲~民法解説

2016.12.04.16:57

保証人の求償権
2016年12月4日記

【質 問】
 主たる債務者に代わって債権者に弁済した保証人は、主たる債務者に対してどの範囲で求償権を有するのか?

【回 答】
 委託を受けた保証人か否かにより求償の範囲が異なる。

[説 明]
1 求償権の性質、根拠規定
 保証人が主たる債務者に代わって債権者に弁済したときは、保証人は主たる債務者に対して求償権を有する。本来、保証債務の履行は、債権者との関係では保証契約に基づく自己の債務の履行であるが、主たる債務者との関係でみれば、それは他人である主たる債務者の債務を弁済したことになる。
この場合の求償権の本来の性質は、委託を受けて保証人になっていた場合は、委任事務処理費用の償還請求(民法649条、650条)であるし、委託なしに保証人になっていた場合は、事務管理費用の償還請求(民法701条)となるはずである。しかし、民法はあえてこれらの特別規定となる規定(民法459条)を置いたので、こちらを優先して適用することになる(「特別法は一般法に優先する」の原則)。

2 求償権の範囲
 保証人の求償権の範囲は、主たる債務者から委託を受けていたか否かで異なることになる。

(1)委託を受けていた(受託)保証人の場合
   連帯債務の場合と同様である(民法459条、442条)。
   つまり、弁済のための出捐額、弁済以降の法定利息、不可避的な費用、損害賠償額を含むすべての求償ができる。

(2)委託を受けずに保証人となっていた場合
   この場合は、さらに保証が主たる債務者の意思に反していたか否かにより分かれる。

  ア)保証が主たる債務者の意思に反しない場合
    出捐行為の当時、主たる債務者が利益を受けた限度において求償ができる(民法462条1項)。つまり、弁済以降の法定利息、不可避的な費用、損害賠償額については求償できない。

  イ)保証が主たる債務者の意思に反する場合
    求償の当時、主たる債務者が現に利益を受ける限度において求償できる(民法462条2項)。つまり、保証人が弁済した後、求償までの間に主たる債務者が債権者に対する債権を取得し、保証人に対してその相殺の原因を主張するときは、保証人は求償できなくなる。したがって、弁済のための出捐額についても、このような場合には主たる債務者に求償できなくなることがあるのである。この場合、保証人は、債権者に対してその相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。つまり、その債権が保証人に移転するのである。
                                                                    以上

借家契約書に記載すべき事項

2015.01.05.12:40

今回は、借家契約書の話しをします。
 
民法の貸借契約の特別法として借地借家法があります。ここで、「借家」とは賃料を払って他人の建物を借りることをいい、この建物には1棟の建物を借りる場合の他、アパートの部屋など建物の一室を借りる場合も含みます。

この借家契約は、法律上は、定期借家契約を除き口頭でも締結することができますが、後日のトラブルを防止する意味ではやはり書面(契約書)を作成しておきべきです。

では、その借家契約書には何を記載すればよいのでしょうか。以下、その主なポイントを紹介します。

1 表題 
 基本的には制限はありません。「覚書」や「確認書」などでもよいですが、できるだけ内容を的確に表す表題を付けるようにしましょう。その意味で、例えば「(居住、店舗、事業)建物賃貸借契約書」などの表題がよいと思います。

2 当事者
 契約当事者の特定のため、当事者(貸主、借主))の氏名、住所を記載します。この場合、印鑑証明書あるいは住民票どおりに記載するのがよいでしょう。

3 目的物の特定
 賃貸目的物である建物を特定するために、所在・地番、用途、構造、面積などを記載します。この場合、登記事項証明書どおりに記載するようにしましょう。

4 使用目的 
 居住用、店舗・事務所用などの別を記載します。

5 賃料 
 賃貸借契約の必要要素であり、この点が使用貸借契約との違いとなります。額、支払時期、支払方法などを記載します。

6 賃料以外の金銭
 賃料以外の金銭(敷金、権利金、礼金、更新料など)を交付する場合は、その内容と額を記載します。

7 建物の引渡時期
 借家人がいつから使用できるのかを明らかにします。

8 契約の存続期間
 期間を定める場合には、必ず記載します。この場合、1年以上の期間を定めるようにきます。1年未満の期間とした場合は、期間の定めのない契約となります(借地借家法第29条第1項)。

9 契約の解除の定め
どのような場合に契約が解除されるのかを記載します。

10 天災その他不可抗力の場合の処置
 地震や洪水などの天災で建物が毀損したとき、その修繕義務を貸主・借主のいずれが負担するのかをあらかじめ明記しておきます。なお、、全部滅失した場合は、目的物が消滅するので、契約は終了するのが原則です。

11 賃借権の譲渡及び転貸の場合
 借主が賃借権を譲渡又は転貸することについて貸主の承諾を要する旨の定めをしておきます。

12 明渡し
 明渡しの方法を記載します。原則として借主は原状回復義務を負いますが、その際の費用負担と敷金返還についてはトラブルが多いので、この点は留意が必要です。

13 特約など
 造作買取請求権(借地借家法第33条)などは特約により排除可能です。ただし、特約でも排除できないものがありますので、特約の定めは慎重に行う必要があります。例えば、「子供が生まれたら立ち退く」、「家主の求めがあればいつでも立ち退く」、普通借家契約において「一切の更新を認めない」などの定めは無効とされます(借地借家法第30条、37条)。

14 その他
 定期借家契約では、書面の作成が必要であり、また必ず「更新はなく、期間満了により契約が終了する」旨の記載が必要です(借地借家法第38条第1項)。

 なお、借家契約の場合、契約書に印紙を貼付する必要はありません。

 以上のポイントを押さえて、きちんとした契約書を作成しておきましょう。 

■ 借地借家契約書でわからないことがあればお気軽にご相談ください。
  
   借地借家、マンション等住まいのコンサルタント

   橋本行政書士事務所
   TEL 059-355-1981


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諏訪公園にて
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口約束はトラブルの元

2012.02.05.15:53

行政書士としていろいろな相談を受けます。

1 まずは、「内容証明で債権の請求をして欲しい」との相談の場合です。
人にお金を貸すことは法律上は「金銭消費貸借契約」といい、法律的にはもちろん返済を求めることはできます。しかし、実際は、いつ貸したのか、返済期限はいつなのか、利息を定めたのかなどが口約束で行われ、金銭消費貸借契約書はおろか念書などの書面も全く作られていない場合があります。さらに貸した相手方に会社が関わっている場合に、会社に貸したのか、個人に貸したのかさえも曖昧な例もありました。
このような場合は、回収はかなり困難となります。人にお金を貸すような場合は、必ず書面を作成しておきましょう。金銭消費貸借契約書が望ましいのは確かですが、そうでない場合は少なくとも以下の項目の書面を残しましょう。
①誰が(貸主名)
②誰に(借主名)
③いつ(貸付年月日)
④いくら(貸付金額)
⑤いつまで(返済期限)
⑥相手方の署名と押印

2 次に、「お金を借りたが、相当期間を経過したので時効の主張をしたい」との相談についてです。
たとえば、消費者金融からお金を借りたが時効消滅を主張したいなどの場合です。
債権は、一定期間請求などの権利行使をしないでおくと、権利が消滅してしまいます。これを「時効消滅」といいます。つまり、お金を借りた債務者であっても、時効期間の経過によって義務を免れるということです。ただし、時効の利益を受けるためには、「時効の援用」という主張をしなければいけません。
民法上の一般債権の時効期間は、原則として10年です(ただし、1~3年の短期の時効期間もあるので注意)。これに対し、商法上の債権は、原則として5年の時効期間となっています。消費者金融との金銭消費貸借の場合は、貸主が会社などの法人である場合は商事債権として時効期間は5年となるのが原則です(貸主が個人の場合などは10年が原則)。
確かに、債権には時効期間があり、借主が時効の援用をすると債務を免れることができます。ところが、実際には、債務を証明する資料を紛失あるいは廃棄してしまい、いつ借りたのか、いつまで返済していたのかが証明できないという相談もあります。このような場合、「時効の援用」として内容証明により時効主張をすることが難しくなる場合があります。
人からお金を借りた、特に消費者金融からの借り入れなどをした場合は、契約書、領収書など証拠となる資料は廃棄せず、整理保管しておいてください。

以上はほんの一例です。これらの場合に、もし契約書や書面などの証拠資料があれば、解決は早いのですが、証拠資料がないと困難となります。行政書士は書面作成を業務としているので、いつも書面(証拠資料)を残すことを意識していますが、一般の方にとってもトラブル防止のために書面に残すことをお勧めします。

theme : 生活・暮らしに役立つ情報
genre : ライフ

プロフィール

橋本俊雄

Author:橋本俊雄
ようこそ「行政書士法務相談室」へ!
三重県四日市市の特定行政書士・マンション管理士です。遺言・相続、契約、離婚手続などの民事法務と中小企業経営支援、マンション管理組合支援を柱に業務を行っています。
法律関係の話題と日々の思いを綴ってゆきます。
どうぞよろしくお願いします。

橋本行政書士事務所所長
特定行政書士、マンション管理士
TEL 059-355-1981

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